隣は何をする人ぞ

先日、空手の稽古帰りですっかり薄暗くなった頃に隣のお宅の前を通りかかると隣のお子ちゃまが窓際で光る腕輪を一生懸命見せびらかしておりました。夜店などでよく売っている蛍光色の粘液のようなモノが入ったアレである。

「お祭りで買うたん?そう。えいねぇ」と声をかけるだけはかけたものの、おではこれから急いで晩飯を作らねばならないのでそれでころではありません。しかし、殿下はすっかり光る腕輪の虜になったようで、しばらく隣の家の窓にカジりついて羨ましそうにそれを眺めておりました。

気が済むまで腕輪を物色し家に入ってきた殿下は、夕食を済ませ風呂に入った後もずっと腕輪の事が気になっていたようで布団に入ってからも「あの腕輪、夕涼み会で買うたがやって」とか「あの腕輪よ・・・」と腕輪の事から離れない。


「ねえ、お母さん。あの腕輪どうして光るが?」

「暗くなったら光るがよね」それ以上はどう説明すればいいのかわからない。しかし、殿下はそれで充分に納得したようだ。


「夜になったら光るが?ふーん、ホテルみたいやね」


ぶふっ!


お母さんドキッとします。突然ナニを言い出すんだこのガキは、と。一体、誰にそんな事を教わったのかよ、と。色んな思いが一瞬の間に走馬灯のように駆け巡りましたが、次の瞬間ハッと閃きました。

コイツは、『蛍』と言いたいに違いない、と。

まったくもってこの母親は心が汚れてしまっているんだなあ、と少し哀しくなってきます。



それにしても、このお子様はこんな状態で本当に来年から小学校に行けるんでしょうか。
ちなみに未だに『ぶどう』は『ぶろう』だし、『こども』は何度言い直しても『こもど』と言い続けるし、『木登り』に至っては『きもごり』などと、あげればキリがないくらい沢山の言葉をちゃんと発音する事ができません。母の不安は募るばかりです。

そんないつまでたっても赤ちゃんぽいぽいな殿下ですが、あまりに腕輪の事ばかり言うので「あんたも腕輪欲しいん?」と訊くと「えー、アレ、女の玩具やろう?男は女の玩具で遊ばんがやもん」と、男には意地張ってツッパらなきゃならない時があるらしい。小さくても、『ぶどう』を『ぶろう』とか言ってても、やっぱり男なのだ。




ときに、ウチは団地の7階なのですが、時々、隣のお宅の前に何故かうんちがあります。

まあ、ウチの殿下よりも小さいお子さんもいらっしゃるのでね、そのコがしちゃったのかな?なんて思ってましたが、そう言えば昼休みに家に帰ってきたら隣のお宅の前はおろかウチの前まで水を流して掃除したかのように水浸しだった事が何回かありました。もしかしたら、あれはうんちを水で流してたのかもしれない、そう考えると辻褄が合います。

本日も、昼休みに家に帰ってくると隣のお宅の前にまたうんちらしき物体がありました。しかも、既に誰かが踏んでいらっしゃいます。うんち付きの足跡が点々と廊下に残されております。
もう、こうなってくると、ちょっとカンベンしてほしいな、と思います。思いますが、そこでハタと疑問がよぎりました。

たしか、今朝、おでと殿下が家を出る時にお隣のパパ上様がおチビどもを保育園に連れて行くところに出くわしました。子供はいないハズですし、実際お隣から子供の息吹は感じられません。では、一体誰が廊下にうんちをしているのでしょう。

いや、もしかするとゲロの一種なのかもしれませんが、どっちにしろカンベンしてほしいですよね(と、お食事中の皆さんに向かって)笑


家の中がごっちゃごちゃの人でも、せめて他人から見えるトコロぐらいはできるだけ綺麗にするモノじゃないでしょうか。まあ、その逆の可能性も考えられますが、もしかして家の中はもっとすごいんじゃないだろうか、などという不安が脳裏を横切ります。


集合住宅の性質上、その中に一軒でも家の中が極端に不潔なお宅があると、その階全体が自然と不潔になります。
以前住んでいた集合住宅に『極端な不潔のお手本』のようなお宅がありまして、そこに越してきてから一度も掃除した事がないのではないかと思われるそのお宅の中は人の住処と言うよりダニやゴキブリの居城と化していたのですが、その事に管理人はおろか隣の住人すら10年以上も気付かずに過ごしておりました。ダニやゴキブリにとってそのお宅は天国みたいな場所だったので、よもや他のお宅に浸出しようなどとは思いもしなかったんでしょうね。ところがある日、偶然そのお宅に足を踏み入れてその惨状を目にした上の階の住人が害虫の駆除を勧めた事から事態はとんでもない方向に向かいます。

それまではおでの部屋でゴキブリを見かける事など年に1〜2回あるかないかという程度、それに、いてもあの一般的な大きさのゴキブリだったのですが、ある日突然、ほんとに突然、体長1cm前後〜体長3mm前後の今まで見た事もないようなゴキブリがそこここに現れるようになりました。それも1匹や2匹ではありません。毎日必ず10匹から15匹は出てきます。我々が起きている時間にそれだけの数のゴキブリが出現するという事は、夜行性で灯りが消え人の気配がなくなったら活発に行動し始めるという彼らの習性から考えると、おそらくその10倍ぐらいは夜中にその辺を這い回っており、更に見えないところにその30倍くらいは潜んでいると考えられます。たとえ、ウチが急に不潔になったとしても、今まで見た事のない種のゴキブリが短期間でここまで爆発的に増えるとはちょっと考えられませんが、この時はまだそうなった原因を知る由もなかったので、後に上の階に住む友人から「あ、それウチのおかんが○○さんちに『バルサン焚きぃや』って言うたせいやと思う 笑」と聞かされるまで、一人頭を抱えて悩んでいたような次第であります。
しかし、このゴキブリが全てバルサンによる難民だという事がわかったからと言って事態が変わるワケではありません。「あんたら、○○さんちから来たんやってね?迷惑やからもう帰ってよ」って言ってゴキブリが帰ってくるワケじゃなし、「○○さん、お宅のゴキちゃん達がうちに住み着いて大変なんでそろそろ連れて帰ってもらえませんかね?」って言って連れて帰ってもらえるワケでもなし、第一、腹が立つので文句の一つも言ってやりたいトコロだが文句を言おうにもそのゴキブリ達がそのお宅産のゴキブリであるという状況証拠は揃っていても確たる証拠は何もないのである。

そのご一家はそれまでバルサンというモノがこの世界に存在している事を知らなかったのでしょうかね。そうなる以前のそのお宅がどのくらいの惨状だったかと言うと、通常のお宅で埃がたまるような場所*1にはゴキブリの糞と交じり合ってネトネトになった最早埃以外の何かとしか言いようがない埃がこびりついており、むき出しの床などにはゴキの屍骸が点々と落ちていて襖や引き戸を開けると上からパラパラと乾いたゴキの破片が降ってくる、極めつけ床に敷いてあるマットなどを捲るとワラワラワラっと無数のゴキが蜘蛛の子を散らすように蠢く、といったような具合で、バルサンを焚いた直後のそのお宅は床が黒く見えるほどゴキブリの屍骸が散乱していたと言うから驚きだ。よくそんな中で生活できるな、と。いや、どうせそういう状況でも平気で生活できてたんならね、いっそバルサンなんか焚いてくれない方が有難かったのに、と切実に思いました。
と言うか、そこまで不潔でも平気な人が住んでいる部屋です。いかにバルサンを焚いたところで、普通に家を毎日清潔に保つという自己管理ができなければ1年後にはまた同じような状況になるのは目に見えているじゃないですか。暖かくなれば既に産み落とされ部屋のあちこちに落ちているであろう何万もの卵から何億というゴキブリが産まれいずるんだ。ゴキブリ1匹見るたびに1円、貯金箱に入れてたら億万長者になれるんだ。どう考えてもバルサンの無駄なんだ。バルサン焚く前に普通に掃除と洗い物を毎日しろよ、と。そんな気持ちです。

こういう集合住宅の場合、バルサンは同じ階の住民と示し合わせて何件かで同時に焚くのが最も効果的ですし、もう既にバルサンを焚くには微妙な季節だったのでバルサンを焚くのを躊躇し日々耐え忍んでおりましたが、その間にヤツら段々ウチに慣れてきたのか出現数が増えてその行動も段々大胆で図々しくなっているようにも見えました。台所のシンクやコンロ周り*2などはもちろんの事、パソコンの周辺*3、果てはポットの注ぎ口*4にまでゴキ!コーヒーを入れて牛乳を注いだ時カップの中に浮かぶゴキ。これを見た瞬間、もうヒトとしての我慢の限度を時速400kmで通り過ぎました。

もう季節なんかどうでもいい!もはや隣近所の事なんかおでの知った事か!今目の前にいるコイツらを殲滅するのだ!
そんな思いでバルサンを焚きました。これで、取り敢えずウチからゴキはいなくなる、そう思いました。しかし、人間考える事はみんな同じでね、もうそれからは同じ階のあちらこちらが水面下でバルサンの焚き合いですよ。バルサンを焚いてゴキブリがいなくなったと思ってもしばらくするとまたどこからともなくゴキブリがやってくるのです。そして、全ての元凶であるあのお宅も必ず年に一度、ゲリラ的に無駄なバルサンを焚いてくれちゃいます。すると、水面下の小競り合いでジワジワと減ったゴキがまたしても急増するのであります。最早バルサンと言うか、ゴキブリ入りのクラスター爆弾としか言いようがありません。

それでも年に2〜3回はバルサンを焚き、毎日清潔に保ちゴキブリにとってあまり住みやすくない環境を維持する、そんな生活を続ける事3年。ようやくゴキが最悪の上と言えるくらいまで減ってきた頃、おでは今の住居に越す事になりました。あの日(最初のバルサン投下)から引越しまでの約3年間、まさに地獄の日々でした。どうして政府はあんな非衛生的な人間を野放しにしておくんだ。とまで思うほどの地獄でした。

幸いな事に、今の家に越してきて約1年、まだゴキブリにはお目にかかっておりません。

もうこの話は過去に幾度となく書いてるうえに、大きく話が逸れましたが、何となくそんな過去の悪夢とミックスされた不安が脳裏をかすめます。

しかし、そんな大人の事情とは別な社会で生きている殿下にとってお隣の子供は今や一番の遊び友達です。
なぜか、子供同士が仲良くしていると、その親同士まで仲良くしなければいけないような気になったりするモノです。おではどちらかと言えばそんな事は気にしない人間ですが、それでもやっぱりそういう事情があると気まずい関係になるのだけは避けたいなと、思ったりします。なので、こういったような事も「おでは何も見なかった。何にも気付かなかった」と自分に言い聞かせるしかありません。


あと、この階はそのような汚物だけでなく、何故かよく廊下に血痕がついているのを見かけます。大体いつも同じような位置からエレベーターまで点々と血痕が続いています。直径1.5cmくらいのモノでしょうか。たしか、血痕は血痕の外周にできる波紋の長さで落下距離が計算できるんですよね?最初は中学生がビニ本でも見て鼻血ボタボタ垂らしながらコキ場所を求めて家を飛び出したりしてるのかな、って思いましたが、どうも、もっと低い位置から落ちた血痕のように見えないでもないです。まあ、専門家ではありませんので何とも言えませんがね。一体誰がどこから何の理由でこんなに頻繁に血を流しながら歩いているのか、不可解で仕方ありません。

なんでこんな得体の知れない住人ばっかなんだ、この階は。

まあ、そう思っているおでも、彼らから見ればきっと得体の知れない住人の一人なんでしょうけれども。ご近所付き合いというのは色々と難しいモノですね。

*1:窓の珊とか、食器棚の引き戸の溝とか

*2:油ぎってるようなトコや湿ったようなトコが好きらしい

*3:たぶんウチの家電の中で一番周辺温度が高い

*4:とても温かく、しかも湿っていて駅前から5分という最高の物件