ハムが危ない
ハムがウチに来てからというもの、すっかり過去の人になりつつある熱帯魚のゆうじ。最近は食欲もなく、よく水槽の底に沈んでふてくされている事が多いです。
ふてくされていると言うか、ゆうじもやはり熱帯魚なので、水温の下がる冬は苦手のようです。
『コップでも飼える』というお手軽なキャッチフレーズで売られていたゆうじですが、結論から言ってコップでは飼えないと思います。いや、そりゃコップで飼っててもある程度生きる事はできるかもしれませんが、あまりにも可哀相ですね。殺さない程度の環境で管理する、白人が最も得意とするアレみたいなモノです。
ハム田は生粋の黄色人種ですが、ついついゆうじの事を忘れがちな今日この頃です。
『巣箱』という名の個室を手に入れたハム達は、こころなしか以前のようにソワソワしたカンジがなくなったように見えない事もないです、ハム田アイには。
現在のハム達の生活サイクルはと言うと、まず、おでが朝起きた時はグッスリ眠っております。たぶん昼までノンストップで寝てるんだと思います。昼休みに家に帰った時にエサや水を交換してやると起きてきて少しだけエサを食ったり水を飲んだりします。しますが、またすぐに寝てしまいます。夕方家に帰ってくると、起きて遊んでいるのですが、部屋の電気をつけるとまた寝てしまいます。眠いワケも昼間だと思ってるワケでもなく人の気配を感じると身を隠そうとしているのではないかと思います。殿下の就寝時刻になって消灯した後、夜23時頃になるとエサを食ったりケージの中を歩き回ったり金網に登ったり回し車を回したり、と活発に動きはじめます。部屋を明るくするとやめてしまいますが暗いとハム田がパソコンをカタカタ言わせてても全然気にならないようです。ハム田が床に就く丑三つ刻を過ぎてもまだやってます。ガサガサガラガラうるさいですが疲れきっているハム田には大して問題になりません。5分もすればハム田にはもう何も聞こえてません。
そのようなカンジで、ほんとに夜中以外はほとんど寝てます。
本日も昼休みに家に戻ったハム田は彼らのエサを交換します。何度見ても味気ないフードですが、割と食べてるようです。そう言えば、コイツら昨日からひまわりの種を全く食べていないんですね。オヤツっぽいモノも与えてません。ちょっとだけひまわりの種をあげてみようか、いや、まだ早いかも、夕方帰ってきてたっぷり与えてあげればいいじゃないか、ううん、やっぱ今あげちゃう、ハム田ひまわりの種あげちゃう。
あげたいんだよ!悪いか!
ほんと、少しだけだから、な?な?いいだろ?
誰に許可を求めているのかわからないが、ああ!何故わたしはひまわりの種なんか持っているんだろういつの間に持っていたんだろう!とハム田もう昨日除けておいたひまわりの種を手に持っておるのです。事後承諾という事で。
あさこが巣箱から出てきてケージの中をウロついております。たけしは今日は巣箱から一度も出てきてません。取り敢えずひまわりの種を一粒指でつまんであさこの前に持っていきます。前にこうして指から与えた時、たけしはいくらでも受け取ったけどあさこは受け取らなかったんですね、もしもまたフラれたらハム田心が折れてしまいます。いや、今日は違うはず。ヤツは今、ひまわりの種に飢えているのだ。
そんなハム田の祈りが通じたのか、ハム田の指からひまわりの種を受け取り、あさこが、食べた〜(語り:下条アトム)
あさこぉぉぉー!ウオー!(ロッキーみたいなカンジで)
純一郎『感動した!』
ハム田が感動に震える間もなく、あさこが両手でハム田の指に必死にしがみついてきます
『ひまわりの種もっとくれよぅ〜』
ハム田イヤーにはそんな空耳が聞こえております。
いいともあさこ、いくらでもあげるともさ!
種をあげながら写真を撮るのはさすがに難しいので、手に群がってる絵を撮れないのが残念でしょうがない。
そうこうしているうちにたけしが巣箱から顔を出したので、たけしの顔の前にもひまわりの種をちらつかせてやる。すぐに食いついた。食いつきながらたけしもジワジワとよって来て、あさことたけし2匹がハム田の手に群がる。両手でおでの指にしがみついては『おでにもくれよぅ』と言わんばかりにハム田の指をカジカジするのだ。
かっ、かわいひ・・・・
すごい!すごいパワーだよ、ひまわりの種!これは人間に例えるとまるでシャブ漬けにされたヤクザのレコだ
バカヤロウ、コレが欲しかったらもっとハム田の手に群がるんだよ、よーしよし、そうだぁいいコだぁ
ハムどもの健康を考えるといくらでもあげるワケにはいかないが、ヤツらの愛らしさに目がくらんだハム田はもう我を忘れている。
嗚呼、手に群がってるトコを撮りたいけど、手に群がられてると写真が撮れない。ああ、もどかしい。
ほんと、誰か撮影係になってくんないかな、マジで
もう、あさこは完全に『この手は美味しいモノをくれる手で危険はない』と理解したのか、それとも単に卑しいだけなのか、いくらでもおでに寄って来る。
ハッ、しまった!今は昼休みだったのだ!
ハム田が我に返った時にはもう昼休みは半分終わっていた。まだ、ご飯も仕掛けてないし、洗濯物も取り込んでないし、昼飯はもちろん食ってない。ああもう、ハムにヤラれっ放しだ!
しかし、その日の夕方、そんなハム田の小さな幸せにある危険が忍び寄っていた。
危険とは即ち、ハム田母である。
ハム田の母はこのラブリーな小動物を総括して『ネズミ』と呼び忌み嫌っている。
ドコが?ドコがネズミなんだよ?なんでリスはよくてハムスターはダメなんだよ!
しかし、リスはリス科の動物で、ハムスターは確かにネズミ科の動物に分類されている。それに、ちょっと前にどっかのジイさんがハムスターに噛まれてショック死した事件が更にハム田母のハムスターに対するイメージをドブネズミ化させていた。
ハム田母にコイツらの存在を知られるワケにはいかないのである、絶対に。
隠せ!隠すんだ!敵はもうすぐソコまで来てるぞ!
ハムを隠す場所くらいいくらでもある、チョロいもんだ。しかし、どうだろう。この、我が家のおしゃべり5歳児が果たしてハムの事を祖母に黙っていられるだろうか
否である
さっそく殿下に言い聞かせねばならない。取り敢えずハム田は殿下に「お祖母ちゃんはハムスターが嫌いだから、見つかったらたけしとあさこをハムの人に返さないといけなくなる」と言うようなカンジで説明して、ハムスターの事は一切口に出さないように言い聞かせた。しかし不安だ。口止めした事で余計にしゃべりそうだ。
ほどなくハム田母がハム田家を訪れ15分少々、殿下が余計な事をしゃべるような隙もなく、滞りなく会談が終わりハム田母が帰ろうと腰を上げたその時である!
「お祖母ちゃん、こっち来て〜見せたいモノがあるき〜」
あれほど言い聞かせたのに、しゃべるトコ通り越してハムスターを見せる気満々だ!
いや、確かに『言うな』とか言ったが『見せるな』とは言わなかったかもしれないハム田迂闊。だがしかしそれは5歳児の使う屁理屈じゃない。普通にアホなのだ、この息子は。
本当にシャレにならないのだこのアンポンタンめ。
もう夕飯だから今度にしなさいとか言って適当にはぐらかしてハム田母のハムへの接近をどうにか食い止めたハム田だが、何か隠していると余計に怪しまれたかもしれない。
どっちにしてもいつまで隠し通せるのか、時間の問題だ。ハム田の胃がキリキリと痛む。