ダメハム、ハム田たけし

さて、本日は昨日届くハズだったハム用品を午前中に受け取り、これを設置しハム達の快適ライフが始まる。そしてハム田の貴重な休日が終わる。そんなカンジの予定です。

ハム田の考えはこうである。
ハムスターは臆病な生き物で、自分のニオイがついていない不慣れな場所に入れられると怯えて落ち着かなくなる。そこで、少しでも彼らの恐怖の緩和になればと今使っているモノと全く同じケージを取り寄せたのだが、このメーカーのケージはシリーズが豊富で、しかも専用のパイプでケージとケージの接続が可能なのだ。
それなら、今のケージと新しいケージをパイプで接続して自由に行き来させ、新しいケージが完全に彼らのテリトリーになった頃にさりげなく分離しちまえばいいのだ。
ハム田、実は天才かもしれん。

ハム田的には今すぐにでもたけしとあさこを別居させたいのだが、急いては事を仕損じる、と申しますし、ここはひとつ慎重に。
何故ハム田があさことたけしを別居させたくてたまらないかと言えば、無論、はじめはあさこが既に妊娠しているのではないかと疑ったからである。
しかし、これはどうやらハム田の勘違いだったようで、よくよく観察してみるとあさこはむしろ活発に動き回っているし神経過敏になっている様子もない。あさこが膨らんで見えたのは頬袋にギュウギュウに食べ物を詰め込んでいたせいでむしろ今はあさこの方がたけしよりも一回り小さく見える。てか、確実に一回り以上小さくなっている。いや、何もあさこが小さくなったワケではない。逆にたけしが大きくなったのだ、成長とは違うニュアンスで。

解説しよう、ハム田たけしは、エサを取りに行く時と水を飲みに行く時以外ほとんどの時間を巣箱の中で食っちゃ寝食っちゃ寝しながら過ごす事により従来より一回り大きいデブスターに変身するのだ。


わかっている、これは変身でも何でもない。

嗚呼!たけちゃん・・・・!

バカで、ビビりで、あまつさえ引き篭もりおデブだなんて!

実はたけしの方がメスで、既に妊娠しているのではないか、とさえ思う。いや、そう考えればたけしの行動や体型の全てに合点がいく。むしろそうであってほしいとハム田は思うのだ。
だって、もしあさこがメスでいずれ妊娠し、あさこまで神経過敏になってハム田に寄って来てくれなくなったら、ハム田一体何が楽しくてハムスターを飼っているのですかよ状態じゃねぇですか!

しかし、無情にも、何度見ても確かにあさこの肛門と生殖器の間隔は狭いのだ。

このままではいけない、何とか、何とかしなければ!
30過ぎの引き篭もり息子を抱えた母親みたいな心境のハム田は30過ぎの引き篭もり息子を抱えた母親みたいな思考ルーチンで30過ぎの引き篭もり息子を何とか社会復帰させるための無駄な手立てにも似た解決策をあーでもない、こーでもない、と模索してみるのだ。
いや、別にそれほど模索もしてないけど 笑、まあ、様々な可能性についてはいくつか考えたりもしてみる。
ハム田はたけしが滑車を回しているトコロもほとんど見た事がない。滑車を回しているのはいつもあさこだ。もしかしたら、活発なあさこが出ずっぱりでたけしは運動する機会を逃しているだけかもしれない、何しろ滑車は一つしかないし、ケージは狭いのだ。

とにかく、少しでも新しいケージに馴染んだらできるだけ早く分離する構えで、今はともかく活動可能範囲を少し広くして様子を見よう。

てなワケで、ハム田はまず新しいケージにオシッコ用の砂を入れて床材を敷き、木製のハムスター用隠れんBOXでジャングルジムをこしらえて砂浴びバスを設置した。こちらはリビングで、既存のケージはダイニング寝室と思っていただきたい。いや、いただきたい、って。ダイニングキッチンならともかくダイニング寝室なんて聞いた事ない。今時ワンルームだってダイニングと寝室は別だ。まあいい。ともかく理想は1DKだ。
ハムどもはまだぐっすり眠っているのでできるだけ起こさないように家屋を増築したい。
新しいケージのジョイント部分にアダプタを接続し次にエルボ、そして直管を接続。まるで水道の配管でもしてるようだ。オイオイ、ハム田は水道屋かよ、ってカンジですが、何を隠そうハム田はマジで水道屋だったのです。イヤな事を思い出してしまいました。休みの日に、仕事の事なんて。
そうして増設管の配管を終えたハム田はいよいよ既存ケージのジョイント部分に反対側のアダプタを差込みます。

リフォーム完了です。

給水工事ならここで通水し水圧をチェックしますが、このパイプの中を流れるのは水ではありません。

ハムです。

ケージとアダプタを接続する際の騒音で、まずはあさこが目を覚まして巣箱から出てきた。たぶん、たけしも目覚めているハズだが、たけしはそう簡単には出てこないだろう。
さあ、いつこのパイプに気付くのか、あさこ。
あさこはしばらくケージの中を調べまわっていたが、やがて気が済むまで調べ尽くすとエサ箱にむかってきた。そこであさこは、ケージの壁に見慣れない穴が開いている事に気付いた。パイプだ。
それはパイプというモノなんだよ、あさこくん。大丈夫だ、キミを食べたりしない。キミもハムスターなら知っているだろう、パイプの楽しさを。何も怖がることはない、それは政治家と企業を繋いでいる汚れたパイプなんかとは違うんだ、通気性もいいし、その先には新天地が待っているのだよ。さあ入りたまへ、パイプの中でうごうごして、ハム田を喜ばせておくれ

とハム田が思い終わらないうちにあさこは何のためらいもなくパイプの中に入っていったのでした。

チッ

あさこは一度パイプをくぐり、その先に新しい空間がある事を知ると、何かを確かめるように何度もそこを行ったり来たりし始めました。あるいは、自分のニオイをこすりつけているのかもしれません。
ああ、ハム田、パイプに詰まってるハムの写真を撮りたいです。

エイッ

くそう、動きが早すぎる。

とおっ

ハム田、パイプの中のハムの写真は早々に諦めました。

そうしてようやく落ち着いたあさこはまず、ジャングルジムの隅っこに頬袋の中の食べ物を吐き出した。そこが食料庫らしい。それから悠々と砂浴びバスに入って砂浴びを始めた。バスの中に入るとコテンッとひっくり返って背中を砂にこすりつけるあさこ。

か、かわいひ・・・!

しかし、砂浴びの様子は動きが激しすぎてこれまた写真に収めることができない。ハム田は地団駄を踏む。
どうにかキャッチできたのは、風呂上りのこの一枚だけだ。

その頃、やうやう巣箱から這い出てきたたけしはしばらく見慣れない穴を調べまわっては遠ざかり、しかし、そこからあさこが出てくるのを目撃すると、「じゃあ、おでも」ってなカンジでパイプにもぐり込もうと試みるのだが腰の重さが災いしてパイプの入り口に引っ掛かってもがいている。しばらくもがいて、どうにかパイプの中にもぐり込むことに成功したが、今度は先に進むのが怖くて三歩進んでは四歩さがる、みたいな事を延々繰り返し、結局新天地に到達しないまま探検を断念。たけしが新天地を開拓したのは、その夜遅くの事だった。そして、新天地に到達したたけしがまず最初にした事と言えば、あさこが吐き出した食物をここぞとばかりに貪り食う事だった。あさこの怒号と思しき鳴き声が聞こえる。

あさこ『ちょっと!何やってんのよ、このゴクツブシ!どきなさいよ、この!こうしてやる!』

たけし『キキキーッ!(痛っ、やめてよあさちゃん!)』

嗚呼・・・・