消えた紙の謎(前編)


ある日、学院内のトイレに入り用を足そうと和式便器を跨いだ瞬間、おではとんでもない光景を目の当たりにして奇声をあげ個室から飛び出した。

とんでもない光景とは、便器の海をプカプカと漂うウン様である。

どこの韓流スターかと見紛うような呼び名だが、これはお食事中の皆様へのささやかな配慮のつもりなので悪しからず。


ウン様現るの一報を耳にし、その個室の周りにはちょっとした人だかりができたのであるが、その中の一人がその佇まいに悪心を催しこれを流してしまった。

場所は女子トイレ。学校で大便をひり出す事自体少なからぬ抵抗を感じ人目を忍びひっそりと行うのがセオリーであるが、ひっそりどころかそれを堂々放置するとは甚だ度胸が過ぎたご婦人もいたものだと。まあ、確かにそれだけでもちょっとした怪事件ではあるのだが、おでを驚かせたのは実はその点ではないのだった。

皆は気付いていないようだったが、その便器にはウン様はいらっしゃったが紙は浮かんでなかったのである。


つまり、通常我々は大便をした後、紙で尻を拭い、その紙を便器に投入しウン様と共に流してしまうワケだが、ここでウン様を流し忘れたとすれば当然そこには尻を拭いた紙も一緒に残っていなければならないはずである。


拭いた紙を先に流しその後でウン様を投入するのは不可能である。いや、厳密には不可能ではないがそんな工作をして一体誰が得をするというのか。

あるいは、拭いた紙をそっとポケットに忍ばせその場を去ったのかもしれない。かもしれないが、そうであればこれは己のリスクを顧みず意図的にウン様を残していったと考えざるを得ないワケで、これまたその意図が不明である。

ストレートに考えれば、拭いてない、としか考えようがない。

しかし、曲りなりにも看護職を目指そうという女子が、うんこして尻を拭かないなどということがあるだろうか。

否、と思いたひ。

あるいは、拭いた紙を尻に挟んだままとか・・・



どちらにしても不潔だし、常識では考えられない。

世の中は謎に満ちている。





という話をモーニングコール係に朝イチで聞かせたところ、「それはミステリーやなぁ。ちょ、山村美沙とかに持ち込んでみたらええんちゃいますか」と。

おで的には青山剛昌に持ち込んでみたかったのだけれども。



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だが、この話に後編などない。